体自身がもう一度バランスを取り戻す
手助けをする東洋医学治療
東洋起源の伝統医学の総称ですが、日本では特に、2000年以上前に古代中国で生まれた伝統医学を指します。 体の自然治癒力を引き出すことで、健康維持や病気の改善を目指す医学です。 科学が発達していない時代に生まれた医学なので、人を自然の一部として考えるという思想に基づいています。
あらゆる物質や現象を「陰陽」のどちらかに分けて考える「陰陽論」。 この世界の全ての事物を「木、火、土、金、水」の五つの要素に分ける「五行説」を理論の基本にしています。 この二つの理論を人間の身体にあてはめ、東洋医学的に身体を診る時の「ものさし(定規)」にするわけです。
「陽」は、ものごとの動的側面を表し、火に代表されるような熱や活動の象徴です。 「陰」は、ものごとの静的側面を表し、水に代表されるような寒さや静けさの象徴です。
人が健康な状態でいるとき、体内における陰と陽のバランスはうまく保たれています。 陰陽どちらかが強くなったり、逆に弱くなったりするとバランスが崩れ、健康が損なわれると考えます。
たとえば夏には身体内部の陽が強くなりすぎないように発汗し、冬には汗腺を閉じて陽が弱くならないように調整しています。 このバランスの偏りが極端になった場合や、調整が間に合わない時に治療が必要となるのです。
人には本来、陰と陽のバランスを自然に回復する機能が備わっているので、陰陽のバランスが崩れて身体の調子が悪くなっても、偏盛の場合には多すぎる陰や陽を減らし、偏衰の場合には減った陰陽を増やすなどして健康体を維持しています。
五行説の「木もく、火か、土ど、金こん、水すい」に対応させて、人間の体は、「肝かん・心しん・脾ひ・肺はい・腎じん」の5つに分けることができます。 ここで注意したいのは、東洋医学でいう肝・心・脾・肺・腎は単なる臓器ではなく、体の機能を示すということです。
草や樹木のことで、茎や枝葉がどんどん伸びていく様子から、柔軟に広がる、伸びやかさの象徴です。
炎や熱のことで、暑さの象徴で、勢いが強くて上昇しやすい性質を表します。
土のもつ、豊かさや濃厚さ、どこかドロドロとした感じをあらわします。
また、そこからいろいろなものが生まれたり、作られたりする事の象徴です。
金属や鉱物の持つ、鋭くて、乾燥していて、透明感のある性質をあわわします。
さらさらとしていて、清らかさの象徴です。
重くて、下方に流れ、地面を固めるために潤いを与える、どっしりとした性質をあらわします。
冷たさや寒さの象徴です。
この5つの性質は、絶妙な関係でお互いのバランスを保っています。 その中でも代表的なのが「相生そうせい」と「相剋そうこく」です。
「相生」は相手を生み育てる関係で、木→火→土→金→水→木の順に関係しています。 たとえば、木が燃えて火がおき、火から灰ができて土を肥やし、さらに土から鉱物ができ、鉱物から鉱水ができてその水は木を育てるといった具合です。 いうなれば、「木」は「火」を育てますので、「木」は「火」の親、「火」は「木」の子となり、「火」は「土」を育てますので、「火」は「土」の親、「土」は「火」の子ということになります。
一方、「相剋」は相手を抑制する関係で、木→土→水→火→金→木の順に関係しています。 木は土の養分を吸収し、土は土手として水の氾濫を抑え、水は火を消し、火は金属を溶かしてもろくし、金属は木を切り倒すといった具合です。
たとえば、脾は肺を生ずる関係にある。脾は母で肺は子にあたる。 脾は胃腸に命令を出して気血津液を製造させている。製造した気血は肺気の循環によって全身に送られる。もちろん、肺そのものが必要とする肺気も脾胃で製造されている。 この関係を脾は肺を生ずると言ったのです。
また、脾は腎を剋す関係にある。 腎は津液(水分)の多い臓である。脾は腎から津液を取り上げて、これを胃に送って働かせて気血を製造させている。この関係を脾は腎を剋すと言うのです。
力の弱まったものは「相生」の関係で励まし、強まりすぎたものは「相剋」の関係でなだめて、全体のバランスをとっています。 バランスが崩れてしまった時は治療が必要になります。
東洋医学的にいう、治療とは、体自身がもう一度バランスを取り戻す手助けをすることです。 治療という手助けを利用しながら、体の持つ治癒力を最大限に発揮できるように日常生活でも工夫する事が大切です。
「未病」とは病気になる一歩手前の状態です。つまり未病を治すとは病気になる前に手を打って病気にならないようにしてしまう事です。 治療は通常、症状があらわれてから、それを解決するためにされます。しかし、ほとんどの場合、いくつもの原因が積み重なってつくられます。 つまり病気は症状が出るずっと前からはじまっているのです。
東洋医学では、睡眠不足、冷たい物のとりすぎなど、その人の生活の様子を見れば、体が起こしそうな歪みを予測することができます。 そして、舌や脈、顔色、皮膚の状態、大便や小便などの体のようす、睡眠や食欲などの自覚症状を総合することで、体の状態を把握することもできます。 東洋医学の治療は、体の歪みに目を向けて治療をします。ですから、ひとつの病気を治療することが、その奥に隠れている多くの未病を治すことにもつながります。
「気」「血」「津液」などが体を流れるときには、経絡という通り道を通ると考えられています。 鍼灸治療はこの経絡上の要所に、ハリや灸で物理的な刺激を加えて、それらの流れを正し、臓腑の調整を行い、体のバランスを整えます。
ハリや灸で刺激する場所は、経絡上にある「ツボ」と呼ばれるところで、刺激に対して特に敏感に反応します。 「足の三里に灸をする」とか「丹田に力を入れる」といった言葉がありますが、「足三里あしさんり」や「丹田たんでん」はこうしたツボの名前の一つです。
経絡は体じゅうに張り巡らされています。 経絡に沿ったツボを刺激して、その経絡の「気血」の流れを調整しているので、痛みの起きている場所とは遠く離れたツボにハリや灸をする事もあります。 それぞれの経絡は、体の特定のはたらきや臓腑と関係しているので、痛みだけでなく、胃炎や喘息などの内科的な疾患をはじめとして、あらゆる治療に応用することもあります。
当院をご利用頂いたみなさんにお声を頂戴しました。